諸掛りの処理

<概要>

  • 商品の仕入や販売に掛かる費用のことを『諸掛り』という。
  • 『仕入諸掛り』は、仕入の際に掛かる経費のこと。これと商品の代金を合わせたものが、『仕入原価』となる。
  • 『仕入諸掛り』という勘定はなく、商品代金と合わせて『仕入』勘定で処理する。
  • 『売上諸掛り』は商品を販売した際に掛かる経費のこと。
  • 『売上諸掛り』という勘定もなく、送料なら通信費や発送費等として仕訳する。

商品売買の際にまつわる経費

実体のある商品にかぎらず、サービスの提供の場合であっても、売買の取引をする際には、商品・サービスそのものの価格以外に、何らかの費用がかかるケースが多々あります。
商品であれば、対面での手渡しでもなければ、郵送や配送を行い、それには費用がかかります。
サービスの提供であったとしても、請求書を郵送すれば、切手代が必要になります。

こういった、売買取引に関連する様々な費用を総称して、『諸掛かり』とよんでいます。

  • 仕入諸掛り : 商品・製品を仕入れる際にかかる運送費などの諸費用
  • 売上諸掛り : 商品・製品を販売する際にかかる運送費などの費用

仕入諸掛りの仕訳のルール

『仕入諸掛り』という勘定はなく、費用グループの『仕入』勘定で処理する必要があります。
そのため、仕訳の際には、以下のように計算をした額を記帳します。

『仕入代金』 + 『仕入諸掛り』 = 『仕入』勘定に記帳する金額

  • 掛取引で製品を仕入れ、その際の送料は現金で支払った。 : (貸方)買掛金の増加 + 現金の減少

仕入諸掛りの仕訳の具体例

事例 借方 貸方
店頭で販売する商品15万円分を掛取引で仕入れ、運送料5,000円は現金で受け取り時に支払った。 仕入 : 155,000 買掛金 : 150,000
現金 : 5,000

 

売上諸掛りによる仕訳のルール

『売上諸掛り』という勘定はないのですが、実際にどの勘定で処理するかは、ケースによって異なります。
*実際にどんな種類の費用がかかったのか。
*その費用を自分が負担するのか、先方が負担するのか。

  • 販売の際の発送費用を自分で負担する場合 : (借方)発送費(費用グループ)の増加
  • 発送費は先方が負担するが、発送時に立替えて支払った : (借方)売掛金の増加 or (借方)立替金の増加

売上諸掛りの仕訳の具体例

事例 借方 貸方
商品50万円分を掛取引で販売した。発送時に運賃5,000円がかかったが、当方の負担で現金で支払った。 売掛金 : 500,000
発送費 : 5,000
売上 : 500,000
現金 : 5,000
商品50万円分を掛取引で販売した。発送運賃5,000円は先方が負担するが、当方にて立替えてた。
*売掛金にプラスして仕訳
売掛金 : 505,000 売上 : 500,000
現金 : 5,000
商品50万円分を掛取引で販売した。発送運賃5,000円は先方が負担するが、当方にて立替えてた。
*別途、立替金として仕訳
売掛金 : 500,000
立替金 : 5,000
売上 : 500,000
現金 : 5,000

仕訳時に借方と貸方が1対1にならないケース

これは『諸掛かり』に限った話ではないのですが、簿記においては、1回の取引で『借方』と『貸方』に登場する勘定科目が1対1にならないケースがあります。

事例 借方 貸方
店頭で販売する商品15万円分を掛取引で仕入れ、運送料5,000円は現金で受け取り時に支払った。 仕入 : 155,000 買掛金 : 150,000
現金 : 5,000

これは、仕入諸掛りで示した例ですが、「借方」が『仕入』1科目に対して、「貸方」が『買掛金』と『現金』の2つの科目に分かれています。
これだと、以前に設計した『仕訳表』では対応できません。

以前に設計した『仕訳帳』の表設計
項目名 情報の種類 どんな情報?
連番 数値 取引の発生順を記録するための連番
起票日時 日付・時刻 金・モノの出入りが発生した日時を記録
金額 数値 実際に動いた金額、または動いたモノの価格
説明 単語・短文 モノを仕入れた・売ったなど、どんな経済活動だったのか
借方 単語・短文 『借方』に当たる『勘定』の名称
貸方 単語・短文 『貸方』に当たる『勘定』の名称

では、『借方』を『借方1』・『借方2』、『貸方』を『貸方1』・『貸方2』と項目を分ければよいのでしょうか?
答えはNoです。

先述の例であれば、『貸方』の金額も分かれていますので、項目を分けようとするならば、『金額』も『借方金額』と『貸方金額』に分けねばなりませんし、更に『借方金額』は、『借方金額1』・『借方金額2』と分け、『貸方金額』も『貸方金額1』・『貸方金額2』と分けなければなりません。
更に追求すると、1回の取引で『借方』・『貸方』に登場する勘定科目は2つまでで収まるのでしょうか?
2つで収まらないとすれば、何項目まで想定する必要があるのかも設計しなければなりません。

仮に『借方金額』・『貸方金額』・『借方科目』・『貸方科目』をそれぞれ1番~5番まで設計したとしましょう。
そこまで増やせば、先述のようなケースでも『仕訳表』のデータ1件で取引を網羅できるでしょう。
しかし、1回の取引で複数の科目が登場するようなケースが、実際どれだけあるのでしょうか?
月に数回あるかどうか、というレベルであれば、せっかく用意した項目の多くが使用されず、無駄になります。

データベース上でのムダも大きいですが、『仕訳表の入力画面』を想定してみてください。
『借方金額』・『貸方金額』・『借方科目』・『貸方科目』がそれぞれ1番~5番まであるのなら、それだけ入力欄も多くなり、使い勝手が落ちてしまいます。
さらに、入力欄が多くなればなるほど、入力ミスの確率も上がりますし、チェック処理・エラー処理が必要になります。

そもそも、簿記をシステム化する目的は、「紙ベースでの簿記を作業を再現する」ことなのでしょうか?

完全に紙ベースでの作業を忠実に再現するのであれば、一見ムダの多い設計でもそうせざるを得ませんが、『完全に再現』というところを少し柔軟に考えれば、先述の仕訳表の設計は全く変える必要はありません。
すべての取引の『借方』と『貸方』に登場する勘定科目が1対1になるように、便宜的に取引を分割して入力するようにしてしまうのです。

具体的に、先述の仕入諸掛りの取引を以下のように分けてしまうのです。

事例 借方 貸方
店頭で販売する商品15万円分を掛取引で仕入れた。 仕入 : 150,000 買掛金 : 150,000
先述の仕入の際の運送料5,000円は現金で受け取り時に支払った。 仕入 : 5,000 現金 : 5,000


このように必ず1対1になるように一連の取引を、便宜的に分けて入力できるように設計しておけば、設計上の無駄なコストも軽減できますし、実際の運用もなれてしまえば、シンプルになるので使いやすいシステムになるはずです。

 

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