現金出納帳への記入を行う

記帳時のルール

<概要>

  • 現金出納帳は現金でやり取りされた取引を記録する帳簿
  • 現金に過不足があったときは摘要欄に「現金不足」、「現金過剰」と記入

現金出納帳は簿記における『補助簿』の一つで、現金でやり取りされた取引を記録する帳簿です。
現金の管理には欠かせない帳簿として紹介されていることが多いですが、残高式の『総勘定元帳』の現金のページを見ることで現金の入出金状況や残高は分かるので、主要簿ではなく補助簿という位置づけになっているのでしょう。

なお、現金出納帳においては、主要簿でおなじみの『借方』、『貸方』という表現は使いません。
受け取った金額は『収入』、支払った金額を『支出』として扱います。

現金出納帳への記入の手順

紙ベースで現金出納帳への転記を行う場合には、以下の様な手順で行うことになっています。
ただし、あくまでもこれは一例なので、細かい部分での差異は現場によってはあると思います。

  1. 日付欄には、取引のあった月日を記入。
  2. 摘要欄には、取引の内容を記入。
  3. 収入欄には、受け取った現金の金額を記入。
  4. 支出欄には、支払った現金の金額を記入。
  5. 残高欄には、一つの取引毎に残高を計算して金額を記入。
  6. 【〆切時】 月末の日付を記入し、摘要欄に「次月繰越」と記入し、支出欄に〆切時点の残高を記入。この行は赤字で書くのが一般的。
  7. 【〆切時】 「次月繰越」の次の行に、収入欄/支出欄それぞれの合計額を算出して記入し、上に合計線(赤の一重線)を引く。
  8. 【〆切時】 日付欄、収入欄~残高欄までに〆切線(赤の二重線)を引く。
  9. 【〆切時】 翌月1日に摘要欄に「前月繰越」と記入して、収入欄と残高欄に前月の金額を記入。

なお、過去の記帳や実際の出納にミスがあり、帳簿上の現金と実際の現金に差異が発生する場合、現金出納帳では現金過不足として処理します。
現金が不足した場合は、摘要欄に「現金不足」と記入し、支出欄にその金額を記入。
現金が多かった場合は、摘要欄に「現金過剰」と記入し、収入欄にその金額を記入。

現金出納帳の記入例

以前の記事で例示した仕訳帳を元に現金出納帳を作成すると以下のようになる。

現金出納帳の扱いはどうするか?

簿記をシステム化する場合、現金出納帳はどう扱えば良いのだろうか?
紙ベースでは「補助簿」扱いであり、総勘定元帳と同様、『出力画面』だけを考えればよい類のものである。
また、記載されている内容自体は、『総勘定元帳』の『現金』科目の内容と同一になるので、『総勘定元帳』の画面の設計で『残高』が分かるようにしておけば、別個に設ける必要はないという方針で「現金出納帳」を用意しないという選択肢もあるだろう。

紙ベースの帳票であれば、現金に絞った現金出納帳の必要性も高いだろうし、場合によっては、現金出納帳も独立した表として設計する場合もあるだろうが、かなり前の記事「One fact in One Place」という原則があることを紹介している。

前の記事と内容は重複するが、大事なことなので繰り返す。
簿記の場合は、あくまでも『取引』が一つの単位になってくるので、その『取引』の事実を何箇所にも保存するのは避けるべきだという考え方である。
その考え方のもとに、『現金出納帳』はあえて表としては持たせず、見たい時点で『仕訳帳』から現金の出納に関するデータをピックアップして、『現金出納帳』として表示する、という設計にすることもあります。

とはいえ、取引の件数が非常に多いような場合は、『現金出納帳』を表示するたびに処理の負荷もかかってしまう可能性もあるので、あえて『現金出納帳』用の表を設計することも決して間違いとはいえない。
「One fact in One Place」という原則が何のためにあるかを考えると、データ修正時の反映漏れなどの不具合のリスクを減らすため、という目的がある。
その辺りの不具合の対策がしっかりと出来るのであれば、仕訳時に毎回転記する、あるいは日ごと・週ごと・月ごとといった定期的な処理として転記の処理を行っても良いかもしれない。

いずれにしても、現金出納帳への『転記』の処理は、簿記をシステム化する場合、入力用の画面が必要な類の処理ではない。
ユーザーが『現金出納帳』表示を指示したタイミングや、定期的な処理として実行される処理となる。
その場合の処理の流れとしては、紙ベースの場合の処理の流れがベースになってくるだろう。

 

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