<概要>
- 仕訳帳はすべての取引を発生順に仕分けして記録する帳簿
- 仕訳帳に記入後に、総勘定元帳に転記する
既に紹介しているはずですが、『仕訳』とは、すべての取引の勘定科目と金額を確認し、借方・貸方を決定することでした。
この『仕訳』という作業の結果を記録するのが『仕訳帳』となります。
つまり『仕訳帳』にはすべての取引が発生順に記録されていることになります。
『仕訳帳』に取引の借方・貸方を記入したら、それを『総勘定元帳』に書き写しますが、この作業を『転記』といいます。
仕訳帳への記入手順
紙ベースで仕訳帳に記入する場合には、以下の様な手順で行うことになっています。
ただし、あくまでもこれは一例なので、細かい部分での差異は現場によってはあると思います。
- 日付欄に取引ごとの日付を記入。同じ日の取引は「〃」として、年や月は各ページの最初と最後や、月が変わるときに記入する。
- 摘要欄の左半分に借方科目を ( ) 付きで1行で記入。その金額を借方欄に書き入れる。
- 摘要欄の右半分に貸方科目を ( ) 付きで1行で記入。その金額を貸方欄に書き入れる。
- 摘要欄に取引の簡潔な説明を、やや小さめの文字で記入する。これは『小書き』と言う。
- 一つの取引を記入し終えたら、次の取引と区別するため、摘要欄の下に赤線を引く。
- 元丁の欄に転記した勘定のページ数を記入する。
- 貸方や借方の勘定科目が複数ある場合は、勘定科目の上に「諸口」と書き入れる。
- ページの最後の行の摘要欄右側には『次頁繰越』と記入し、借方・貸方それぞれにその頁の合計金額を記入。
- 次のページの最初の行の摘要欄右側に『前頁繰越』と記入し、借方・貸方欄に全ページの合計金額(=次頁繰越の行に記入した金額)を記入する。
仕訳帳の記入例
仕訳帳への記入作業の設計
さて、紙ベースへの仕訳帳への記入手順を紹介したが、簿記をシステム化する場合も、仕訳帳への記入が重要な作業になってくるので、仕訳帳への記入作業の流れをどのように設計するかも重要なポイントである。
紙ベースの記帳手順が元にはなるのだが、システム化することで自動化出来る箇所や、手順の見直しが必要な箇所なども出てくる。
合わせて、仕訳の入力画面、出力画面をどのようなレイアウトにするか、仕訳帳の表設計をどうするかも考えていかないといけない。
仕訳帳への記入フロー
さて、まずは記入の手順をどうするか考えてみる。ベースは紙ベースでの手順だが、大前提として『仕訳の入力画面』を用意し、そこに1つの取引を入力させる、という方式を取るのがベターだろう。
出力画面としての『仕訳帳』は紙ベースに近づけたとしても、入力画面が紙ベース然としていては、あまりメリットがない。
それを踏まえて、記入時のフローを以下のように設計してみる。
- 『仕訳入力画面』を表示させる。
- 日付欄に、取引の日付を入力する。*同じ日の取引があったかどうかは考慮しない。
- 『摘要』欄に、取引の簡潔な説明を記入する。
- 『借方科目』欄に科目名を一覧から選択入力し、その金額を『借方金額』欄に入力する。
- 『貸方科目』欄に科目名を一覧から選択入力し、その金額を『貸方金額』欄に入力する。
- 借方・貸方の勘定科目が複数ある場合は【入力欄の追加】の操作を行い、入力欄を増やして入力する。
- 【確定】や【入力完了】等のボタンを押下して、入力を完了させる。この時に、借方・貸方の金額の整合性チェックや、管理用の取引通番の付与などの処理をシステム内部で行う。
- 入力された内容を反映して、『仕訳帳』の出力画面を表示させる。
紙ベースと大きく変わる点としては、以下の様な点がある。
- 仕訳入力用の画面が用意されており、そこに入力する。
- 借方は左側、貸方は右側という点は入力時に気にする必要はない。
- 小書きを小さい文字で書くなど、文字の大きさを気にする必要はない。
- 次の取引と区別するための区切り線は自動で付与できる。
- 仕訳の入力時に借方・貸方の整合性チェックが可能。
- 出力画面の設計にもよるが、ページ繰越が無いので、その都度、借方・貸方の合計を求める必要はない。ページ繰越の機能をつけたとしても、計算は自動化出来る。
仕訳入力画面
先述の記入フローと合わせて、『仕訳入力画面』を設計する。
以下のイラストはに、必要最低限の項目だけを備えたレイアウトの例である。
*例では、借方・貸方ともに3つずつ入力欄があるが、初めは一組のみで、『+』ボタンを押すと入力欄が増えるイメージ。
仕訳表のテーブル設計
さて、仕訳表のテーブル設計であるが、ここで考えないといけないのは、1回の取引で『借方』と『貸方』に登場する勘定科目が1対1にならないケースである。
このケースが、ごく稀にしか無いのか、それとも日常的にありえるのかを考えないといけません。
稀にしか無いのであれば、以前の記事でも述べたように、すべての取引の『借方』と『貸方』に登場する勘定科目が1対1になるように、便宜的に取引を分割して入力するようにしてしまう、と言った割りきった表設計も可能です。(その場合は、仕訳入力画面の項目数や機能も更に減らせます)
項目名 | 情報の種類 | どんな情報? |
---|---|---|
連番 | 数値 | 取引の発生順を記録するための連番 |
起票日時 | 日付・時刻 | 金・モノの出入りが発生した日時を記録 |
金額 | 数値 | 実際に動いた金額、または動いたモノの価格 |
説明 | 単語・短文 | モノを仕入れた・売ったなど、どんな経済活動だったのか |
借方 | 単語・短文 | 『借方』に当たる『勘定』の名称 |
貸方 | 単語・短文 | 『貸方』に当たる『勘定』の名称 |
しかし、日常的に『借方』・『貸方』が1対1にならない取引が発生するのであれば、それを踏まえて入力画面も、表の設計も考えなくてはなりません。
かと言って、以前の記事で指摘したように、『借方金額』・『貸方金額』・『借方科目』・『貸方科目』をそれぞれ1番~5番まで設計するのもあまりお薦めはできません。
そこで、下記のような表の設計を行うのも、有効な方法と言えるでしょう。
項目名 | 情報の種類 | どんな情報? |
---|---|---|
仕訳通番 | 数値 | 取引の発生順を記録するための連番 |
仕訳枝番 | 数値 | 一連の取引の中で、勘定科目毎の記録をつけるための番号 |
入力日時 | 日付・時刻 | 一連の取引を入力した日次を記録 |
借貸区分 | 数値 or 単語 | このデータが借方・貸方いずれのデータに当たるのかを示す区分 |
摘要 | 短文 | 取引に対する簡潔な説明文 |
勘定科目名 | 単語 | 該当する勘定科目名 |
金額 | 数値 | 該当する金額 |
削除フラグ | Yes/No | 該当する取引を削除したかどうかを表す『フラグ』データ *データの修正・削除が発生した時でも、修正前の情報は残しておく必要が有るため。 |
このようにすれば、1つの取引がデータ1件で完結しない点はどうしても避けられませんが、1取引あたりの借方・貸方それぞれの件数の上限を気にする必要はありません。
気になるのは、1取引内での借方・貸方の整合性チェックですが、『仕訳通番』で絞り込めば、まず1取引に関連するデータは絞り込めます。
そのうえで、『借貸区分』を見れば、借方・貸方のどちらのデータかはわかるので、『同一の仕訳通番のデータで、借貸区分が「借方」になっているデータの金額の合計と借貸区分が「貸方」になっているデータの金額の合計が一致する』という条件でチェックすれば、整合性も確認できます。
この方式だと、仕訳入力画面からの入力時や、仕訳表画面の出力時に、その都度データを借方・貸方に振り分けないといけないので、その分の処理が煩雑にはなってしまいますが、紙ベースで『諸口』が頻繁に登場するような場合であれば、致し方ないところでしょう。
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